桃が川を流れてくる音と言えば・・・?
誰もが知っている日本の昔話『桃太郎』の冒頭で印象的な場面と言えば、川で洗濯をしていたおばあさんの元に大きな桃が流れてくるシーンですが、その時桃は音もなく流れてくるわけではありません。
この場面を私たちの脳裏に強く印象付けているのは川を流れてくる桃につけられた特徴的な効果音どんぶらこ どんぶらこです。
この効果音、桃が川を流れてくる時のほかには聞いたことのない独特なものですよね。
日本昔話には「どんぶらこ」と同じように他に類を見ない独自SE付きの登場シーンを持つキャラクターが存在します。
今回はそんな個性的な登場が印象に残るわたしのお気に入りの日本昔話プリンセスをご紹介したいと思います。
日本昔話のプリンセス うりこひめ
日本のお姫様と言えば思い浮かぶのは中学校の古典の授業でも習うかぐや姫ですが、
今回ご紹介したいのはうりこ姫です。
うりこ姫の出てくるお話のタイトルは『うりこひめとあまのじゃく』というもの。
桃太郎は桃から生まれますが、うりこ姫はその名の表す通り瓜から生まれ出てきます。
さて、注目の川上から瓜が流れてくるシーンはこう描かれています。
ばあさまは川へせんたくにいきました。
ポプラ社 はじめての世界名作えほん59 うりこひめとあまのじゃく より
すると、川かみからおおきなうりが、つんぶりこんぶりとながれてきました。
つんぶりこんぶり!他のどんなお話でも目にすることがない独特の表現です。
どんぶらこどんぶらこともまた違った不思議な音だと思いませんか?
瓜は桃と違った楕円の形をしているためか水への抵抗が少ないようなすこし控えめな感じなのがかわいらしいですね。
うりこひめとあまのじゃくのあらすじは
このお話ですが、主人公はおとなしい女の子であるうりこ姫なので姫があまのじゃくを懲らしめるものではありません。
序盤は瓜から生まれたうりこ姫がおじいさんとおばあさんに拾われ大切に育てられて
美しく器量よしに成長して評判となり、長者さまに見初められ結婚を申し込まれるところから始まります。
育ての親であるおじいさんとおばあさんは可愛いうりこ姫のために張り切って花嫁衣裳を買いに町へ出かけて行き、
うりこ姫は家の戸をしっかり閉めて、得意の機織りをしながら留守番していました。
そこへ山から悪いあまのじゃくがやってきてうりこ姫に成り代わり自分が長者さまの家に嫁入りしようと企てますが……
うりこ姫は大変美しく心優しい女性なのですが大切に育てられたためか世間知らずで、
しつこく頼まれると断り切れずに流されてしまう一面もありお話の中盤で大ピンチに陥ります。
おじいさんおばあさんもうりこ姫の危機に気が付かず、どうなってしまうの?というところで思わぬ助けが入って
最後には「いつまでも しあわせに くらしました。」で締めくくられるハッピーエンドとなります。
あまのじゃくが現れてからうりこ姫とどのように入れ替わろうとするのか?
ピンチに陥ったうりこ姫を誰がどうやって助け出すのか?
お話の見所となる部分は是非ご自身で、または周りのお子さまと一緒に確かめてみてください。
さいごに
この物語には上でふれた「つんぶり こんぶり」の他にも、
うりこ姫が機織りをするときの「トントン カラリン トンカラリン」
あまのじゃくがうりこ姫を真似て機織りをするときの「ドンドン バッタリ ドンバッタリ」
など楽しい効果音が登場しますので読み聞かせをすると読む側も聞く側もリズム感が楽しい作品です。
また、暴力表現や命をおとす描写はないので小さいお子さまも安心して楽しめると思います。
現在こども向けで出版されているものは表現がやわらかく改変されているもので、
原作では姫が命を落とし、あまのじゃくも残酷な罰を受けて死に、
残された人たちが悲しみにくれるなんとも救いのないお話となっております。
絶望的な結末がお好みの方は原作をお楽しみください。
原作とちいさいいお子さま向けのお話を読み比べてみて表現の違いを楽しむのも面白いですよ。