累積譚(るいせきたん)・ぐるぐる話とは……
登場人物やエピソードが鎖のようにつながってい続いていく形式のお話のこと。
順序正しく続いていく繰り返しの展開が面白さで、同じ展開の積み重ねが
それぞれのラストシーンへ繋がる心地よさが癖になる作品が多いです。
ロシアの昔話 『おおきなかぶ』
小学校の国語の教科書にも載っている有名なお話です。
おじいさんが畑にできた「とてつもなくおおきなかぶ」を抜こうと奮闘しますが抜くことができず、
おばあさんに手伝ってもらっても抜けず、孫にも手伝ってもらってそれでも抜けず、
ついには犬、猫、ねずみまで呼んできて力を合わせてかぶを抜くことができました。
言ってしまえばそれだけのお話なのですが、
後ろの人(動物)が前の人(動物)をひっぱって、最前のおじいさんがかぶをひっぱって……
うんとこしょ どっこいしょ と頑張り続ける連続が覚えやすく
おじいさんたちと一緒に掛け声の合唱が起こる人気の物語です。
ラトビア民話 『ひつじかいとうさぎ』
森で捕まえたうさぎを逃がしてしまった羊飼いの少年がうさぎを追いかけるうちに
さまざまなものに出会い、うさぎを捕まえるのを手伝ってほしいとお願いするも断られる。
その次に出会ったものに断られた報復をお願いするも断られる……という繰り返しのお話です。
このお話で面白いところはぐるぐる話の同じ展開の繰り返しもそうなのですが、
羊飼いの少年がうさぎを探す道で出会うものたちの種類、属性です。
おおかみ、棍棒(!)、火(!)、川(!!)、牛、熊の順に出会うのですが
棍棒や火、川が向こうから歩いてきて会話もできる事が
幼少期読んだ時からいいなあ!面白いなあ!と思っています。
お願いを断られ続ける中で最後に出会った熊が、ついにお願いを聞いてくれて
そこからの折り返し、一気に風呂敷が畳まれる感じがとっても気持ちがいいです。
読み終わってすぐに読み返したくなる、そんなお話です。
加古里子 ぶん・え 『マトリョーシカちゃん』
窓から外を見ていてさみしくなったマトリョーシカちゃんが
お客さんを呼ぶために張り紙をします。
「みちを とおる みなさん。
どうか わたしの ところへ
あそびに きてください。
ドナーシャも クラーシャも
ダーシャも まっています。マトリョーシカ」
加古里子 さく・え『マトリョーシカちゃん』
すると、ドナーシャちゃんに会いにゆらゆらにんぎょうのイワンちゃんが、
クラーシャちゃんに会いにドングリにんぎょうのイリューシャちゃんが、
ダーシャちゃんに会いにおしゃれにんぎょうのアンドリューシャが、
マトリョーシカちゃんに会いに悪魔退治帰りのペトリューシャが遊びに来ます。
家の中にマトリョーシカちゃんの姿しか見えないことで
ペトリューシャ以外のお客さんが、マトリョーシカちゃんしかいないじゃないかと怒り出すのですが
マトリョーシカちゃんが開いて中からダーシャちゃんが、
ダーシャちゃんが開いてクラーシャちゃんが、クラーシャちゃんが開いてドナーシャちゃんが飛び出してきて
みんなで歌ったり踊ったりおしゃべりして楽しく過ごすことになります。
お客さんが次々訪ねてくる場面と、マトリョーシカ人形から次々に小さい人形が出てくる場面の
先の展開はわかるけれどどんなお人形が来るのかな?というワクワクがある作品です。
累積譚はある意味単調な繰り返しなので子どもも大人もお話の流れがとらえやすく
最後は積み重ねられたものが成就したり景気よく崩れたりすることで
気持ち良い読後感が味わえます。
今回ご紹介したほかにも楽しいぐるぐる話はたくさんありますので
お気に入りを探してみてください。